アドバイザリーボードコラム

株式会社エクサ 森田氏よりの投稿

カイゼン活かすサイトでは、ITシステム運用経験が豊富なシニアの方々にアドバイザリーボードメンバとして活躍していただいております。当コラムへの寄稿や会員情報交換サイトでのアドバイス等をお願いしております。当コラムでは、経験を通した貴重な情報の提供、現在のITシステム運用への提言等を掲載いたします。
ITシステム運用の「カイゼン」のアイデア満載のページにご期待ください。

[2006年12月6日]

第3回  システム運用のマネージメントシステム(2/2)
(株式会社エクサ 森田氏よりの投稿)

[プロフィール]
森田 和夫(もりた かずお)   株式会社エクサ  第1事業部 理事
1947年生まれ。群馬県出身。
NKK(現JFEスチール)に入社、本社及び製鉄所の情報システム部で主としてシステム基盤構築、システム運用を担当。1987年分社独立した(株)エクサで、技術部、金融系SIプロジェクトを経て、JFE向けコンピュータセンター所長としてY2K問題、日本IBMアウトソーシング化、ISO9000s認証取得、ISMS認証取得、EXGMS構築、JFE経営統合に伴うコンピュータセンター統合、等を推進。

統合マネージメントシステムの構築

折角構築したマネージメントシステムも、それが重荷になる様では逆効果であり、規格/標準重視型から「使い易い」、「解り易い」、「軽い」ものへと脱皮すべく、QMSとISMSの再編統合に踏み切った。全くのゼロから作るのでは無く、既にできている仕組みを統合すれば良いので、その作業負荷は少なかったものの、既存のマネージメントシステムを維持管理しながら新マネージメントシステムへ移行した為、およそ8ケ月を要したが、メンバー全員の積極的参加で、より実務に沿った手順に再整理する事ができた。
再整理に際しては以下の点を考慮している。

  • とにかく文書量そのものを削減する。
  • 手順は文書表現をやめ図表化し、手順の流れとポイントを明確化する。
  • 記録保管は必要最小限に留める。
  • 真に必要なプロセスを残し、冗長/形式的なプロセスは廃止する。

また、マネージメントシステム統合の最終段階では、それまでQMSとISMSを別々の外部機関に審査して頂いていたが、これを一本化している。統合マネージメントシステムの概要は以下の通り。

〔文書体系〕

〔運用体制〕
  EXGMS
適用組織範囲 事業部
経営者 事業部長
経営者補佐 センター長
責任者 Mgtグループ長
推進部署 Mgtグループ
Mgtレビュー 1回/半年
内部監査 1回/半年
定例会議 1回/月

(EXGMS:Experience Generic Management System)


〔プロセス体系〕

主な統合の効果は次の通り。

  • Mgtレビュー回数 :半減
  • 内部監査回数 :半減
  • 文書削減
    • 35文書⇒24文書(▲11)
    • 331頁⇒214頁(▲116)
  • 責任・権限の統一
  • 外部審査機関の統一化
    • 審査負荷の軽減
    • 審査費用の削減

〔ITILとEXGMSの対比〕

ITILのサービスマネージメントとEXGMSのプロセス対比は次の通りであり、EXGMSはITILのサービスマネージメントで要求しているプロセスを全て包含していると考えている。

ITILプロセス EXGMSプロセス  (右欄は含まれる機能要件)
サポート サービス・デスク ヘルプデスク ・ヘルプデスク・オペレーションデスク・テクニカルデスク
インシデント管理 運用管理 ・稼動・資源・障害・その他の監視・管理
問題管理 課題管理 ・障害・是正・予防・課題管理
構成管理 コンピュータシステム管理 ・構成管理・ユーザ管理・維持・保守管理
変更管理 変更管理 ・変更管理・文書管理・記録管理
リリース管理 設計・開発 ・プロジェクト管理・システム移行・業務移管
デリバリ サービスレベル管理 サービス提供 ・性能管理・サービスレベル管理・顧客満足度管理
ITサービス財務管理 費用管理 ・予算・課金・コスト・契約・購買管理
キャパシティ管理 事業計画 ・キャパシティ・設備・要員・資源・技術・業務計画
ITサービス継続性管理 事業継続管理 ・情報資産・リスク管理・セキュリティ管理・バックアップ管理
可用性管理 お客様関連・監査 ・目標管理・教育訓練・監査・顧客要求事項他

システム運用の継続的改善

統合マネージメントシステムの運用を開始して既に3年、従来に較べてその維持管理負荷は大幅に軽減され、品質面・セキュリティ面のレベルアップも確実に図られている。
最近はシステム運用そのものの可視化を図るべく、システム運用に拘わる各種データや情報を開示・掲示したり、ブレークスルー活動と称する業務改善提案活動を通じて、システム運用の一層のレベルアップに向けた活動に、メンバー一人一人が自主的に参加している。

一般的にシステム運用部門はシステム開発部門に較べて、モチベーションが低い、とか元気が無い、と言った声をよく耳にする。当社でも何年か前までは、覇気の無い、暗いイメージの職場だったと記憶しているが、QMSの構築、ISMSの構築、プライバシーマーク取得、EXGMSの構築、等のメンバー全員の参加によるマネージメントシステムの構築をする過程で、一人一人が何事にも前向きに取組む様になったと感じている。他者からとやかく言われてやるのでは無く、自分達のやり易い仕事の仕方を考案した方が楽しいし達成感を味わえるのも事実の様である。
数年前までは職場全体で飲会とかボーリング大会などを行っても、何だかんだと理由を付けて半数は欠席していたが、最近は常に90%近い参加率となっており、仕事以外での職場の一体感も養われてきた印象を受けている。年中行事となっている全社員を対象にした50数項目に亙る「社員満足度調査:無記名方式」の結果でも、ここ数年は社内でもトップクラスにランクされており、一人一人のモチベーションの高さを物語っていると言えよう。

最後にシステム運用のマネージメントシステムを上手く回すポイントを列挙し、纏めとしたい。

  • 経営層・上層部がシステム運用の本質を理解し、率先垂範する姿を示す。
  • 常に新しい目標や仕事の仕方を考え、毎年少しずつ変化を取込むアイデアと工夫を生み出す。
  • リーダーのやる気、メンバーのやる気、メンバーの自主性を引出す工夫と刺激を与える。
  • 外部審査にメンバーも交替で参加し、外部審査員と会話を楽しみ勉強する雰囲気を体験する。
  • 規格に囚われ過ぎず、自分達の出来るやり方に改善する。
  • マネージメント推進部署を設置し、地道な活動を側面から支援する。
  • 職場活性化活動を通じて、メンバーの一体感と協調性を養い、風通しの良い職場風土を育てる。
  • 障害の真の原因究明と再発防止策は徹底的に行なう。
  • 文書管理、変更管理と言った地道な仕事もきちんと業績評価する。
  • マネージメントシステムの有効性をお客様や他部署にもアピールし協力をして貰う。
Copyright(C)BSP Solutions Inc. All Rights Reserved