運用事例集

運用の現場を取材したユーザ事例

[2007年5月9日]

株式会社 菱食

運用品質向上とサービスレベルアップ
〜当社はこのようにしてITシステム運用現場を改善した、また今後改善していきたい〜

2つのIDCセンターを保有し、大規模なITシステム運用を行っている株式会社菱食は、運用現場のさまざまな課題に取組み、業容拡大に対応しながら、1年間でトラブルを30%削減。人員を増やさずに2.9倍の開発依頼にも対応できるようになった。改善前の運用状況や課題、ITIL導入を始めとした改善への取組みとその成果を紹介する。

※本稿は、2007年3月17日−19日に開催された第24回Beaconユーザシンポジウムにおける事例発表の内容をまとめたものです。

内容

<第1回 改善前の運用状況と課題>
大規模運用〜2つのIDCセンターを有し、本部が開発・運用を統括
業容拡大に対応しつつ、運用標準化・品質向上を図る
<第2回 改善への取組みと効果>
ITILの導入〜「なぜ」を繰り返し、改善を進める
要因1「JCLミス」への対応〜チェックツールを開発・適用
要因2「ハードディスクの領域不足」への対応〜領域管理手法を変更
要因3「プログラム不具合」への対応〜データベースのデッドロックを解消
システム統括部の組織変更〜改善・問題管理の専任体制へ
SLMの推進
その他〜スキルアップ対策など
1年でトラブルは3割減り、開発依頼対応件数は2.9倍に
ITシステム運用として今後の成すべきこと

ロゴ
お客様会社概要
名称 株式会社 菱食
設立年月日 大正14年3月13日
資本金 106億円
売上高 1兆4367億円(平成18年度末)
事業内容 加工食品卸売業を主業務として、冷凍・チルド類・肉、酒類・菓子、ペットフード他の販売。PB商品に「リリー」「白ゆり」ブランド。
HP http://www.ryoshoku.co.jp/
<第1回 改善前の運用状況と課題>

大規模運用〜2つのIDCセンターを有し、本部が開発・運用を統括

株式会社菱食は1925年(大正14年)3月に設立され、1979年(昭和54年)に三菱商事系食品卸会社4社が合併して現在の商号となり、全国をサービスエリアとするナショナルホールセラーとして活動を続け、現在グループ会社20数社にまで拡大。「消費と生産を結ぶ価値あるかけ橋」をテーマに、加工食品卸売業を主業務として、冷凍・チルド類・肉、酒類・菓子、ペットフード等の販売を行い、2006年度末グループ売上高は1兆4367億円を数えている。菱食グループとして、全国に161箇所の営業拠点、300箇所の物流拠点をもっている。

菱食は、館林と明石の2箇所にIDCセンターを保有し、グループ会社、各支店、営業所、物流拠点のすべてがセンターにネットワーク接続されている(図1)。基幹サーバー(メインフレーム)をはじめとして、物流サーバー、営業サーバー等システム関連の機器はすべて館林と明石の2センターに統合され、BCP(事業継続計画)の観点から、館林と明石いずれかで障害が起きた時には、互いに代行できるようにしている。 北海道、東北、関東、中部、関西、中四国、九州の7エリアすべてに、運用サポートを行うユーザサポートチームを設置し、各地区のユーザ支援を行っている。また、システム開発・運用問合せの窓口は、本部(東京)に一括集中させ、本部が開発・運用を統括する体制をとっている。

図1 菱食グループ全体システム構成(ハードウェア)
(図をクリックすると拡大表示します)
菱食グループ全体システム構成(ハードウェア)

同社のシステム運用状況は、以下のように大規模なものである。

    ●対象ユーザ:グループ24社・300拠点、ユーザ数約5,800人
    ●EDI・EOS(オンライン受発注システム)取引数(ある1日):集信3996、配信2219サービス
    ●取扱高: 約1兆9,000億円(2006年度)
    ●取扱い件数: 約5億1,200万件(2006年度)
    ●問合せ件数/日: 約1,000件

システム運用は、社員93人、外部委託32人の計125人で担当している。

業容拡大に対応しつつ、運用標準化・品質向上を図る

菱食のIT投資額は、人件費を除いて47億円(2006年度)、人件費を含むと約82億円にのぼり、売上の約0.5%を占めている。業容拡大に対応しながら、IT投資額を運用改善によっていかに抑えていくかは大きな課題である。

運用改善を進めるにあたって、ユーザ側から求められる課題は、「安定運用」、「システム運用費の削減」、「問合せ対応の充実」の3つに集約される。安定運用については、BCPの実現、トラブル発生時の2時間以内の修復、オペレータの質の向上、社員の質の向上とオペレータとの連携など。システム運用費の削減については、人件費、および人件費以外の回線やスペースなどのアウトソーシング費の削減が求められている。問い合わせ対応については、365日24時間対応、できる限りの即答性、通常業務からPC対応にいたるまであらゆる問い合わせに対応できることが要望されている。

システム側からみた問題点・課題は、「障害改善」、「標準化」、そして「業容拡大への対応」である。トラブルが多く、月間約1,000件の問い合わせ対応に追われている。しかし、同一障害、同一問い合わせがあるほか、JCLやシェルの作成ミスや無駄も多く、障害対応には改善の余地が多く隠されている。また、運用に必要なドキュメントがない、開発のプロセスが可視化されていない、開発から運用への引継ぎに無駄がある、運用に関わる企業情報がナレッジ化されていない、組織変更がドキュメントされていない、などの標準化の問題が多く残っていた。
また、業容拡大に伴って開発依頼や問合せが増え、的確な対応ができない状況にあった(図2)。2005年11月を例にとると、開発依頼件数は249件あり、調査依頼件数672件とあわせると、対応件数は月間921件。月間の総業務時間15,306時間に対し、開発変更に充てた時間は4,881時間で、3分の1弱だった。人員を増やさずに増加する開発依頼に対応することが求められていた。 2005年9月〜12月を例にとると、月間1000件以上のトラブルが発生(図3)。トラブル増加により運用オペレーションに人員がとられてしまう一方で、開発依頼件数の増加により、十分にテスト検証できないままにリリースし、トラブルを招くという悪循環に陥っていた。

図2 開発依頼の増加 
(図をクリックすると拡大表示します)
開発依頼の増加
図3 月別トラブル件数
(図をクリックすると拡大表示します)
月別トラブル件数

上記の運用現場の問題のほか、企業として取り組むべきIT内部統制についてもまだ十分とはいえず、業務システムのログ管理をより適切に行う必要もあった。菱食は、以上のような課題に本格的に取組み、パートナー企業の協力を得ながら、システム運用面での改善・品質向上を進めている。

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